Agile 書評 アジャイルサムライー達人開発者への道

 2011/07/13

オーム社様から献本いただきました。ありがとうございます。

アジャイルサムライ−達人開発者への道−

著者/訳者:Jonathan Rasmusson

出版社:オーム社( 2011-07-16 )

定価:¥ 2,808

Amazon価格:¥ 2,808

単行本(ソフトカバー) ( 288 ページ )

ISBN-10 : 4274068560

ISBN-13 : 9784274068560


アジャイルサムライは、Jonathan Resmusson氏が昨年書いた本で、日本語監訳は永和システムマネジメントの西村さん(@nawoto)と角谷さん(@kakutani)。 僕は僭越ながら翻訳原稿のレビューに参加させて頂いたのだが、本当に素晴らしい本で、出版を心待ちにしていました。 これからアジャイルな開発に取り組もうとしている人にとっても、既にアジャイルな開発に取り組んでいる人にも役に立つ必携図書であること間違いなしです。

この本の特徴

  • ScrumやXPやLean等の特定の方法に特化せず、現実のプロジェクトをうまく進めることに主眼が置かれており、筆者の実体験を感じることができること。これはHenrik Kniberg氏が書いた塹壕よりScrumとXPとも共通することと言えるだろう。
  • 現実のプロジェクトをアジャイルに進めるために必要なことがコンパクトな分量であるにも関わらず網羅的に書かれていること(ユニットテストやリファクタリング、TDD、CIの説明もある)
  • 読みやすい文体で一度読み始めたら一気に最後まで読めてしまうこと。アート・オブ・アジャイル・デベロップメントやアジャイルな見積もりと計画づくりも良書であることは間違いないが一気に最後まで読むのはなかなかしんどい。そういう人たちにとってはまずこの本がオススメだ。

特におすすめしたい章

一度は全部一気に読むことをオススメするが、本書の中でも特に素晴らしいと思うのは、第II部「アジャイルな方向付け」だ。 皆経験があることだと思うが、プロジェクトが開始した時点で、既に雲行きが怪しいプロジェクトというのが大変多い。例えば顧客はシステムに対して漠然とした過度な期待や幻想を抱く一方で、開発側は、期間や予算の制約の中ではなからどうやったら大きな被害を被らずにプロジェクトを終わらせるかといったことばかりに関心を向けてる、なんてこともあるだろう。

アジャイルな開発を進めるにあたっては、関係者が、そのプロジェクトが成し遂げる価値について合意し、現実と向きあって作る物の優先順位を決め、諦めなきゃいけないことを決め、そしてはっきりしていないことは明らかにしていかなければならない。これは発注者にも受注者にも共通した責任である。

そしてこれらをしていくためのツールとして本書ではインセプションデッキというツールを紹介している。 インセプションデッキでは以下のようなスライドを作成する。

  • 我われはなぜここにいるのか
  • エレベーターピッチ
  • パッケージデザイン
  • やらないことリスト
  • ご近所さんを探せ
  • 解決案を描く
  • 夜も眠れない問題
  • 期間を見極める
  • 何を諦めるのか
  • 何がどれだけ必要か
本書の原著者のRasmusson氏が自身のサイトで公開しているインセプションデッキのテンプレートを、僕が翻訳したものをこちらにおいておいた。 (追記)監訳者の角谷さんから、公式版のインセプションデッキの公開のお知らせを頂いた。本との整合性も含めそちらをご利用ください。詳しくはhttps://github.com/agile-samurai-ja/support/tree/master/blank-inception-deck

このインセプションデッキを作ることで、プロジェクトの共通理解を開発チームだけではなく、より広く関係者に知らしめることが出来るようになる。 詳しくは是非本書を読んでみて頂きたい。 アジャイルな開発の書籍は多いがプロジェクトの立ち上げ時期での活動について、ここまで明快に説明している例は僕は他に知らない。

まとめ

繰り返しになってしまうが、本書は現実のプロジェクトをアジャイルに進める方法を実例や分かりやすい例を交えながら説明している。インセプションデッキの箇所は既にアジャイルな開発をしている人だけではなく、ウォーターフォールのプロジェクトでも役にたつし、コンサルティングなんかにも役に立つだろう。他の章も知見に基づいた素晴らしい内容だ。是非何度も読み返して欲しい。

本書の読書会が既にいくつか企画されているので興味のある方は調べていただきたい(僕の知る限り、既に渋谷と湯島で行われることが決まっている)。 また、7/30に実施するScrum Boot Campでは本書の監訳者の@nawotoもコーチとして来る予定なので、その場にこの本を持参すればサインがもらえるはずだ。

 2011/07/13

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