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ryuzeeによるブログ記事。不定期更新

態度重要

みなさんこんにちは。@ryuzeeです。

今度翔泳社さんから発売される、「100人のプロが選んだソフトウェア開発の名著 君のために選んだ1冊」という本に明らかに場違いな感じ(まわりの人凄過ぎる)ですが、寄稿させていただきました。

原稿を公開して良い、ということなので、公開しておきます。他の寄稿者の方は本当にすごい方ばかりで、いままでにないタイプの本だと思いますので、本当にオススメです。 僕が選んだ本は、あえてアジャイルプラクティスです。

原稿はここからです。

Ryuzeeが「うちの会社ではアジャイルなんてできない」という人に贈りたい

僕はアジャイルな開発のやり方を企業や組織に導入していくお手伝いをすることを生業としています。アジャイルコーチなんていう呼び方をしたりします。

ここ1、2年、色々な媒体やメディアでアジャイルという言葉が出てくるようになりました。 SIerの中でも、アジャイルな開発手法を取り入れるところが増えましたし、変化の速度がとても早いソーシャルゲーム業界では、アジャイルな開発スタイルでなければ、そもそもビジネス面での競争に勝てない状況になっています。 またシステム開発を仕事としていないお客様の経営レベルの方が、アジャイルに興味を持ち、システムを作る際に発注先に、「アジャイルで」と指定されるケースも聞くようになりました。 一方で、コーチとして色々な方の相談をうけた際には、しばしば「うちの会社ではアジャイルはできない」といった嘆きを聞きます。

ところで、アジャイルって何なのでしょうか? 何かの方法論にしたがっていればアジャイル? 朝会をやっていればアジャイル?テスト駆動開発をしていればアジャイル?専用のソフトウェアを使っていればアジャイル?

アジャイルという単語は「俊敏な、活発な、いきいきとした」という意味の形容詞です。 形容詞は物事の性質や度合いを表します。 また修飾対象がなければなりません。 つまるところ、アジャイルな開発とは、俊敏さや活発さの度合いの高いいきいきとした開発を指し、0と1のバイナリなものではないということです。

さて、ソフトウェアを作るに際して一番大事なものは何でしょうか? 仕様が揃っていること?納期に余裕があること? 高性能の環境があること? もちろんこれらも大事ですが、一番大事なのは人です。 ソフトウェアを作る人たちが前向きにゴールに向かって絶え間ない改善と努力をしながら進んでいく態度こそが必要な物だと考えています。

そう考えると、「うちの会社ではアジャイルはできない」ってどういうことでしょうか? そう言ってしまっている時点で前を向き、努力することを放棄してしまっていませんか? 今の開発のやり方がウォーターフォールでも何でも、前を向いて努力していくことはできるはずです。 隣の芝生は青いものですし、自分が努力すること無しに誰かが素晴らしい状況に変えてくれるわけでもありません。

この本はタイトルにはプラクティスとついていますが、単にベストプラクティスを45個列挙したという本ではなく、なぜそのプラクティスを行うと良いのかという理由も書かれていますし、どんな開発現場にでも役にたつヒントがたくさんあります。 前に進んでいくために、使えるプラクティスは一杯あるはずですし、使えるものは何でも使えば良い。 そういう態度を持ち行動を続けることこそがアジャイルな開発です。 態度重要

この本の中で僕が一番好きなプラクティスは、一番最初に書かれている「成果をあげるのが仕事」というプラクティスです。 こんなのは当たり前じゃないか?と思うかもしれないですが、ともすると周りの状況や制約の中で知らず知らずのうちに忘れてしまうこともあるかもしれません。 しかし我々はそれでお金を貰っている以上はプロなのです。 プロであれば成果を出さなきゃいけない。 いま自分が置かれている環境がどんな環境であれ、成果を出すために自分から前に進んでいかなければならないのです。

この本の全部のプラクティスをやらなければいけないわけではありません。 そもそも僕自身も全てができているわけでもありません。 自分の置かれた環境ではプラクティスが適用できないこともあるでしょう。 ただ行動を起こさないことには何も変わりません。 そしてこの本はあなたの行動の大きなヒントになるはずです。

それでは。

アジャイルコーチングやトレーニングを提供しています

株式会社アトラクタでは、アジャイル開発に取り組むチーム向けのコーチングや、認定スクラムマスター研修などの各種トレーニングを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

詳細はこちら
  • スクラム実践者が知るべき97のこと
  • 著者/訳者:Gunther Verheyen / 吉羽龍太郎 原田騎郎 永瀬美穂
  • 出版社:オライリージャパン(2021-03-23)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラムはアジャイル開発のフレームワークですが、その実装は組織やチームのレベルに応じてさまざまです。本書はスクラムの実践において、さまざまな課題に対処してきた実践者が自らの経験や考え方を語るエッセイ集です。日本語書き下ろしコラムを追加で10本収録
  • プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける
  • 著者/訳者:Melissa Perri / 吉羽龍太郎
  • 出版社:オライリージャパン(2020-10-26)
  • 定価:¥ 2,640
  • プロダクト開発を作った機能の数やベロシティなどのアウトプットで計測すると、ビルドトラップと呼ばれる失敗に繋がります。本書ではいかにしてビルドトラップを避けて顧客に価値を届けるかを解説しています。
  • SCRUM BOOT CAMP THE BOOK 【増補改訂版】
  • 著者/訳者:西村直人 永瀬美穂 吉羽龍太郎
  • 出版社:翔泳社(2020-05-20)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラム初心者に向けて基本的な考え方の解説から始まり、プロジェクトでの実際の進め方やよく起こる問題への対応法まで幅広く解説。マンガと文章のセットでスクラムを短期間で理解できます。スクラムの概要を正しく理解したい人、もう一度おさらいしたい人にオススメ。
  • みんなでアジャイル ―変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた
  • 著者/訳者:Matt LeMay / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン(2020-3-19)
  • 定価:¥ 2,640
  • アジャイルで本当の意味での成果を出すには、開発チームだけでアジャイルに取り組むのではなく、組織全体がアジャイルになる必要があります。本書にはどうやってそれを実現するかのヒントが満載です
  • レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める9つのプラクティス
  • 著者/訳者:David Scott Bernstein / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン( 2019-9-18 )
  • 定価:¥ 3,132
  • レガシーコードになってから慌てるのではなく、日々レガシーコードを作らないようにするにはどうするか。その観点で、主にエクストリームプログラミングに由来する9つのプラクティスとその背後にある原則をわかりやすく説明しています。
  • Effective DevOps ―4本柱による持続可能な組織文化の育て方
  • 著者/訳者:Jennifer Davis、Ryn Daniels / 吉羽 龍太郎、長尾高弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2018-3-24 )
  • 定価:¥ 3,888
  • 主にDevOpsの文化的な事柄に着目し、異なるゴールを持つチームが親和性を高め、矛盾する目標のバランスを取りながら最大限の力を発揮する方法を解説します
  • ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント
  • 著者/訳者:リチャード・シェリダン / 原田騎郎, 安井力, 吉羽龍太郎, 永瀬美穂, 川口恭伸
  • 出版社:翔泳社( 2016-12-20 )
  • 定価:¥ 1,944
  • 米国で何度も働きやすい職場として表彰を受けているメンローの創業者かつCEOであるリチャード・シェリダン氏が、職場に喜びをもたらす知恵や経営手法、より良い製品の作り方などを惜しみなく紹介しています
  • アジャイルコーチの道具箱 – 見える化の実例集
  • 著者/訳者:Jimmy Janlén / 原田騎郎, 吉羽龍太郎, 川口恭伸, 高江洲睦, 佐藤竜也
  • 出版社:Leanpub( 2016-04-12 )
  • 定価:$14.99
  • この本は、チームの協調とコミュニケーションを改善したり、行動を変えるための見える化の実例を集めたものです。96個(+2)の見える化の方法をそれぞれ1ページでイラストとともに解説しています。アジャイル開発かどうかに関係なくすぐに使えるカタログ集です
  • カンバン仕事術 ―チームではじめる見える化と改善
  • 著者/訳者:原田騎郎 安井力 吉羽龍太郎 角征典 高木正弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2016-03-25 )
  • 定価:¥ 2,138
  • チームの仕事や課題を見える化する手法「カンバン」について、その導入から実践までを図とともにわかりやすく解説した書籍。カンバンの原則などの入門的な事柄から、サービスクラス、プロセスの改善など、一歩進んだ応用的な話題までを網羅的に解説します。
  • Software in 30 Days スクラムによるアジャイルな組織変革“成功"ガイド
  • 著者/訳者:Ken Schwaber、Jeff Sutherland著、角征典、吉羽龍太郎、原田騎郎、川口恭伸訳
  • 出版社:アスキー・メディアワークス( 2013-03-08 )
  • 定価:¥ 1,680
  • スクラムの父であるジェフ・サザーランドとケン・シュエイバーによる著者の日本語版。ビジネス層、マネジメント層向けにソフトウェア開発プロセス変革の必要性やアジャイル型開発プロセスの優位性について説明
  • How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜
  • 著者/訳者:Jurgen Appelo, 前川哲次(翻訳), 川口恭伸(翻訳), 吉羽龍太郎(翻訳)
  • 出版社:達人出版会
  • 定価:500円
  • どうすれば自分たちの組織を変えられるだろう?それには、組織に変革を起こすチェンジ・マネジメントを学習することだ。アジャイルな組織でのマネージャーの役割を説いた『Management 3.0』の著者がコンパクトにまとめた変化のためのガイドブック