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【書籍発売のお知らせ】みんなでアジャイル ー変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた

みなさんこんにちは。@ryuzeeです。

2020年3月19日に新刊『みんなでアジャイル ―変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた』が発売になりますのでお知らせします。

なお、電子書籍で読まれたい方は、オライリー・ジャパンのサイトにてPDFならびにepub(Kindkeにインポート可能)がご購入いただけます。

どんな本か?

Matt LeMay著『Agile for Everybody: Creating Fast, Flexible, and Customer-First Organizations』(ISBN:978-1492033516)の全訳になります(Amazon.comでの評判はこちらをご参照ください)。

このサイトをご覧になっている方の多くは実際のアジャイル開発の現場に何らかの関わりのある方だと思います。多くの現場でアジャイル開発の導入が進み、日々使うプラクティスについてはさまざまな情報があって、それらを活用して日々改善を繰り返すことで、みなさんの「開発」現場はどんどん良くなっていると感じます。

一方で業界全体、組織全体に目を向けると、アジャイル開発が「単なる開発工程の効率化や高速化」を目指して導入されている例をたくさん見かけます。成功事例として開発効率X%アップとか、工数Y%削減とか聞くと、作ったものでビジネスの成果が出たのかどうかを突っ込みたくなるわけです。開発工程の効率化や高速化自体は重要な活動ではありますが、残念ながらこれはビジネス全体から見ると部分最適化の1つに過ぎず(もちろん開発が最大のボトルネックだったということはありえますが)、結果的にビジネスのバリューチェーンの最適化に至っていないことが多いです。

開発がアジャイルでも、組織のほかの部分が従来の計画主導型で変化を受け入れる余地が少なければ意味がありません。本書は「組織全体」として、どうアジャイルに「なるか」を説明する本です。つまりフレームワークだけ導入して、どうにもイマイチといった状況を避けるにはどうしたらよいかを考える本でもあります。

以下のような問題に悩まされている方にとってはヒントになると思います。

  • 第 1 法則: 組織に属する個人は、日々の責任やインセンティブと整合性がなければ、顧客と向き合う仕事を避ける。
  • 第 2 法則: 組織における個人は、自分のチームやサイロの心地よさのなか でいちばん簡単に完了できる作業を優先する。
  • 第 3 法則: 進行中のプロジェクトは、それを承認したいちばん上の人が止めない限り、止まることはない。

本書の構成

本書は216ページ、7章から構成されています。本書の日本語版のまえがきは、『ソフトウェア・ファースト』の著者及川卓也さんに書いて頂きました(このまえがきがアツいです!)。
  • 本書への推薦の言葉
  • まえがき
  • はじめに
  • 1 章 「アジャイル」とは何か? なぜ重要なのか?
    • 1.1 ムーブメントとしてのアジャイルを理解する
    • 1.2 アジャイルの魅力を紐解く
    • 1.3 従来の仕事の仕方からの脱却
    • 1.4 アジャイル対ウォーターフォール
    • 1.5 アジャイル、リーン、デザイン思考
    • 1.6 まとめ:アジャイルはシンプルにできている(だが簡単ではない)
  • 2 章 自分たちの北極星を見つける
    • 2.1 フレームワークの罠から逃れる
    • 2.2 意義あるものにする:ゴールと課題を設定する
    • 2.3 自分のものにする:アジャイルの価値と原則を使って変化を促す
    • 2.4 まとめ:アジャイルはフレームワークの罠の先にある
  • 3 章 顧客から始めるのがアジャイル
    • 3.1 組織重力の第 1 法則からの脱却
    • 3.2 顧客視点で速度を見る
    • 3.3 「動くソフトウェア」のその先
    • 3.4 アジャイルプラクティスの探求:スプリントでの作業
    • 3.5 この原則をすばやく実践する方法
    • 3.6 まとめ:顧客第一!
  • 4 章 早期から頻繁にコラボレーションするのがアジャイル
    • 4.1 組織重力の第 2 法則からの脱却
    • 4.2 報告と批評の文化から協調的な文化への移行
    • 4.3 事件の起こる部屋
    • 4.4 発掘・スケールのためにつながりを作る
    • 4.5 アジャイルプラクティスの探求:デイリースタンドアップ
    • 4.6 この原則をすばやく実践する方法
    • 4.7 まとめ:コラボレーションの文化を作る
  • 5 章 不確実性を計画するのがアジャイル
    • 5.1 組織重力の第 3 法則からの脱却
    • 5.2 アジャイルの逆説:柔軟性を実現するための構造を活用する
    • 5.3 実験の両刃の剣
    • 5.4 アジャイルも不確実だ
    • 5.5 アジャイルプラクティスの探求:ふりかえり
    • 5.6 この原則をすばやく実践する方法
    • 5.7 まとめ:変化はよいものだ。それを望むなら
  • 6 章 3 つの原則に従い、速くて柔軟で顧客第一なのがアジャイル
    • 6.1 アジャイル組織のリーダーシップ
    • 6.2 チームと職能を横断してアジャイルをスケールする
    • 6.3 全員を結び付けるストーリー:IBM でのエンタープライズデザイン思考
    • 6.4 アジャイルプラクティスの探求:WHP(I なぜ、どうやって、プロトタイプ、繰り返す)
    • 6.5 この原則をすばやく実践する方法
    • 6.6 まとめ:すべてをつなげる
  • 7 章 あなたのアジャイルプレイブック

翻訳について

翻訳は前作『レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める9つのプラクティス』と同様に株式会社アトラクタのアジャイルコーチ4人で行いました。 また、10名を超える方に日本語訳のレビューをしていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

いつものように原稿はすべてRe:VIEWフォーマットで記述しGitHub上でバージョン管理し、ソフトウェア開発と同じようなやり方で作業しています。

最後に

繰り返しですが、2020年3月19日発売です。是非ご覧になって感想など頂ければ幸いです。それでは。

 

アジャイルコーチングやトレーニングを提供しています

株式会社アトラクタでは、アジャイル開発に取り組むチーム向けのコーチングや、認定スクラムマスター研修などの各種トレーニングを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

詳細はこちら
  • スクラム実践者が知るべき97のこと
  • 著者/訳者:Gunther Verheyen / 吉羽龍太郎 原田騎郎 永瀬美穂
  • 出版社:オライリージャパン(2021-03-23)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラムはアジャイル開発のフレームワークですが、その実装は組織やチームのレベルに応じてさまざまです。本書はスクラムの実践において、さまざまな課題に対処してきた実践者が自らの経験や考え方を語るエッセイ集です。日本語書き下ろしコラムを追加で10本収録
  • プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける
  • 著者/訳者:Melissa Perri / 吉羽龍太郎
  • 出版社:オライリージャパン(2020-10-26)
  • 定価:¥ 2,640
  • プロダクト開発を作った機能の数やベロシティなどのアウトプットで計測すると、ビルドトラップと呼ばれる失敗に繋がります。本書ではいかにしてビルドトラップを避けて顧客に価値を届けるかを解説しています。
  • SCRUM BOOT CAMP THE BOOK 【増補改訂版】
  • 著者/訳者:西村直人 永瀬美穂 吉羽龍太郎
  • 出版社:翔泳社(2020-05-20)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラム初心者に向けて基本的な考え方の解説から始まり、プロジェクトでの実際の進め方やよく起こる問題への対応法まで幅広く解説。マンガと文章のセットでスクラムを短期間で理解できます。スクラムの概要を正しく理解したい人、もう一度おさらいしたい人にオススメ。
  • みんなでアジャイル ―変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた
  • 著者/訳者:Matt LeMay / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン(2020-3-19)
  • 定価:¥ 2,640
  • アジャイルで本当の意味での成果を出すには、開発チームだけでアジャイルに取り組むのではなく、組織全体がアジャイルになる必要があります。本書にはどうやってそれを実現するかのヒントが満載です
  • レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める9つのプラクティス
  • 著者/訳者:David Scott Bernstein / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン( 2019-9-18 )
  • 定価:¥ 3,132
  • レガシーコードになってから慌てるのではなく、日々レガシーコードを作らないようにするにはどうするか。その観点で、主にエクストリームプログラミングに由来する9つのプラクティスとその背後にある原則をわかりやすく説明しています。
  • Effective DevOps ―4本柱による持続可能な組織文化の育て方
  • 著者/訳者:Jennifer Davis、Ryn Daniels / 吉羽 龍太郎、長尾高弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2018-3-24 )
  • 定価:¥ 3,888
  • 主にDevOpsの文化的な事柄に着目し、異なるゴールを持つチームが親和性を高め、矛盾する目標のバランスを取りながら最大限の力を発揮する方法を解説します
  • ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント
  • 著者/訳者:リチャード・シェリダン / 原田騎郎, 安井力, 吉羽龍太郎, 永瀬美穂, 川口恭伸
  • 出版社:翔泳社( 2016-12-20 )
  • 定価:¥ 1,944
  • 米国で何度も働きやすい職場として表彰を受けているメンローの創業者かつCEOであるリチャード・シェリダン氏が、職場に喜びをもたらす知恵や経営手法、より良い製品の作り方などを惜しみなく紹介しています
  • アジャイルコーチの道具箱 – 見える化の実例集
  • 著者/訳者:Jimmy Janlén / 原田騎郎, 吉羽龍太郎, 川口恭伸, 高江洲睦, 佐藤竜也
  • 出版社:Leanpub( 2016-04-12 )
  • 定価:$14.99
  • この本は、チームの協調とコミュニケーションを改善したり、行動を変えるための見える化の実例を集めたものです。96個(+2)の見える化の方法をそれぞれ1ページでイラストとともに解説しています。アジャイル開発かどうかに関係なくすぐに使えるカタログ集です
  • カンバン仕事術 ―チームではじめる見える化と改善
  • 著者/訳者:原田騎郎 安井力 吉羽龍太郎 角征典 高木正弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2016-03-25 )
  • 定価:¥ 2,138
  • チームの仕事や課題を見える化する手法「カンバン」について、その導入から実践までを図とともにわかりやすく解説した書籍。カンバンの原則などの入門的な事柄から、サービスクラス、プロセスの改善など、一歩進んだ応用的な話題までを網羅的に解説します。
  • Software in 30 Days スクラムによるアジャイルな組織変革“成功"ガイド
  • 著者/訳者:Ken Schwaber、Jeff Sutherland著、角征典、吉羽龍太郎、原田騎郎、川口恭伸訳
  • 出版社:アスキー・メディアワークス( 2013-03-08 )
  • 定価:¥ 1,680
  • スクラムの父であるジェフ・サザーランドとケン・シュエイバーによる著者の日本語版。ビジネス層、マネジメント層向けにソフトウェア開発プロセス変革の必要性やアジャイル型開発プロセスの優位性について説明
  • How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜
  • 著者/訳者:Jurgen Appelo, 前川哲次(翻訳), 川口恭伸(翻訳), 吉羽龍太郎(翻訳)
  • 出版社:達人出版会
  • 定価:500円
  • どうすれば自分たちの組織を変えられるだろう?それには、組織に変革を起こすチェンジ・マネジメントを学習することだ。アジャイルな組織でのマネージャーの役割を説いた『Management 3.0』の著者がコンパクトにまとめた変化のためのガイドブック