ブログ

ryuzeeによるブログ記事。不定期更新
アジャイル開発に取り組むチーム向けのコーチングや、技術顧問、認定スクラムマスター研修などの各種トレーニングを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください(初回相談無料)

自動テストのfixtureを効率的に管理する方法

みなさんこんにちは。@ryuzeeです。

僕がやっている案件(PHP)はもともとテストコードのないレガシーなプロジェクトで、それを改善するためにずっと動作を確認するための結合レベルの自動テストを増やしてきました。 そんな中で、僕のところではどうやってテスト用のfixtureを管理しているか事例として紹介したいと思います。

最初にコアとなるfixtureを用意する

みんながたくさんテストを作る前にコアとなるテスト用のfixtureは用意しておきます。 さもないと、みんなが好き勝手にfixtureを作ってしまい、あっという間に混乱に陥ります。 プログラム本体と同様に、DRYの原則で、同じようなテストデータを繰り返し作ってしまうようなことは避けるべきです。 最悪なパターンは、開発機や本番機のデータを引っこ抜いてきて、それをそのままテストデータとしてごっそり使う方法です。 流石に居ないと思いたいですが、こういうことをやってしまうとテストデータの見通しが悪すぎて、テストが失敗した場合の検証が非効率だし、そもそもデータのロードに時間がかかりすぎます。

共通のfixtureとテストケースごとのfixtureを分離する

マスター系のテーブルとか、ユーザー情報のテーブルのためのfixtureはテストケースごとにバラバラに用意してはいけません。 似たようなfixtureがあちこちに造られると、テストの数が増えてからの仕様変更の際にテストデータのメンテナンスだけでえらく時間が取られてしまうことになります。 僕の場合は、共通fixture置き場に基本的なfixtureをテーブルごとに配置した上で、テストケースごとのfixtureを上書きでロードしています。 以下はPHPの場合ですが、基底クラスで、以下のようにCSVの取り込みロジックを作っておきます。

protected function getDataSet()
{
    echo __FUNCTION__ . "\n";
    $dataSet = new PHPUnit_Extensions_Database_DataSet_CsvDataSet();

    if(is_array($this->fixture_path)) {
        foreach($this->fixture_path as $path) {
            echo "----" . $path . "\n";
            if ($dir = opendir($path)) {
                while (($file = readdir($dir)) !== false) {
                    if ($file != "." && $file != ".." && substr($file, -4) == ".csv") {
                        $table_name = str_replace(".csv", "", basename($file));
                        echo "===loading $file...";
                        @$dataSet->addTable($table_name, $path . "/" . $file);
                        echo " done!\n";
                    }
                }
                closedir($dir);
            }
        }
    }
    return $dataSet;
}

そして、テストケースのコンストラクタあたりで

public function HogeTest()
{
    $this->fixture_path = array(dirname(__FILE__) . '/../fixture/',
        dirname(__FILE__) . '/./fixture/'
    );
}

のようにして、fixtureを複数階層に分けてロードしています。 fixtureをYAMLやXMLで持ってても同じことができるはずです。

fixtureの内容をチェックするためのツールを作る

僕はPHPUnit+Seleniumで結合試験を自動化していて、fixtureはテーブルごとにCSVファイルを用意しています。 これらのCSVをsetUp()で読み込むようにしていますが、fixtureのカラム数があっていないと、すぐテストが落ちてしまいます(XMLでfixtureを保持していると楽かもしれないですが)。 開発中は、当然カラムの追加や削除はありますが、その度にどのfixtureを修正しなければならないかを考えるのは面倒で仕方がありません。 したがって、僕は、全fixtureをDBのスキーマと照合するツールを作っています。 これがあればスキーマの変更の怖さはちょっと軽減されます。

fixtureを自動生成するようなツールを作る

手で整合性の取れたfixtureを作るのはなかなか大変なので、Excelでfixtureをつくるようにもしています。 予め用意しておいたシートに値を入れてマクロを動作させると、fixtureが自動で生成されます。 こういうツールもプロジェクトの早い段階で用意できていると効率的でしょう。

日付や時刻等で、テストの成功・失敗条件に関わるテストデータはfixtureとは切り離す

例えば最終ログインから60日たっていたらAをして、120日たっていたらBをする、というテストケースの場合、fixtureに最終ログイン日時をハードコーディングできません。 ハードコーディングしてしまうと、そのテストは実行日によってテスト結果が変わってしまうテストであり、自動テストの条件を満たさないからです。 このような場合は、fixtureにて識別可能な適当な値を設定しておいて、別途テストの初期化メソッドで値を書き換えるような対応をします。

それでは。

  • スクラム実践者が知るべき97のこと
  • 著者/訳者:Gunther Verheyen / 吉羽龍太郎 原田騎郎 永瀬美穂
  • 出版社:オライリージャパン(2021-03-23)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラムはアジャイル開発のフレームワークですが、その実装は組織やチームのレベルに応じてさまざまです。本書はスクラムの実践において、さまざまな課題に対処してきた実践者が自らの経験や考え方を語るエッセイ集です。日本語書き下ろしコラムを追加で10本収録
  • プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける
  • 著者/訳者:Melissa Perri / 吉羽龍太郎
  • 出版社:オライリージャパン(2020-10-26)
  • 定価:¥ 2,640
  • プロダクト開発を作った機能の数やベロシティなどのアウトプットで計測すると、ビルドトラップと呼ばれる失敗に繋がります。本書ではいかにしてビルドトラップを避けて顧客に価値を届けるかを解説しています。
  • SCRUM BOOT CAMP THE BOOK 【増補改訂版】
  • 著者/訳者:西村直人 永瀬美穂 吉羽龍太郎
  • 出版社:翔泳社(2020-05-20)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラム初心者に向けて基本的な考え方の解説から始まり、プロジェクトでの実際の進め方やよく起こる問題への対応法まで幅広く解説。マンガと文章のセットでスクラムを短期間で理解できます。スクラムの概要を正しく理解したい人、もう一度おさらいしたい人にオススメ。
  • みんなでアジャイル ―変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた
  • 著者/訳者:Matt LeMay / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン(2020-3-19)
  • 定価:¥ 2,640
  • アジャイルで本当の意味での成果を出すには、開発チームだけでアジャイルに取り組むのではなく、組織全体がアジャイルになる必要があります。本書にはどうやってそれを実現するかのヒントが満載です
  • レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める9つのプラクティス
  • 著者/訳者:David Scott Bernstein / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン( 2019-9-18 )
  • 定価:¥ 3,132
  • レガシーコードになってから慌てるのではなく、日々レガシーコードを作らないようにするにはどうするか。その観点で、主にエクストリームプログラミングに由来する9つのプラクティスとその背後にある原則をわかりやすく説明しています。
  • Effective DevOps ―4本柱による持続可能な組織文化の育て方
  • 著者/訳者:Jennifer Davis、Ryn Daniels / 吉羽 龍太郎、長尾高弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2018-3-24 )
  • 定価:¥ 3,888
  • 主にDevOpsの文化的な事柄に着目し、異なるゴールを持つチームが親和性を高め、矛盾する目標のバランスを取りながら最大限の力を発揮する方法を解説します
  • ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント
  • 著者/訳者:リチャード・シェリダン / 原田騎郎, 安井力, 吉羽龍太郎, 永瀬美穂, 川口恭伸
  • 出版社:翔泳社( 2016-12-20 )
  • 定価:¥ 1,944
  • 米国で何度も働きやすい職場として表彰を受けているメンローの創業者かつCEOであるリチャード・シェリダン氏が、職場に喜びをもたらす知恵や経営手法、より良い製品の作り方などを惜しみなく紹介しています
  • アジャイルコーチの道具箱 – 見える化の実例集
  • 著者/訳者:Jimmy Janlén / 原田騎郎, 吉羽龍太郎, 川口恭伸, 高江洲睦, 佐藤竜也
  • 出版社:Leanpub( 2016-04-12 )
  • 定価:$14.99
  • この本は、チームの協調とコミュニケーションを改善したり、行動を変えるための見える化の実例を集めたものです。96個(+2)の見える化の方法をそれぞれ1ページでイラストとともに解説しています。アジャイル開発かどうかに関係なくすぐに使えるカタログ集です
  • カンバン仕事術 ―チームではじめる見える化と改善
  • 著者/訳者:原田騎郎 安井力 吉羽龍太郎 角征典 高木正弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2016-03-25 )
  • 定価:¥ 2,138
  • チームの仕事や課題を見える化する手法「カンバン」について、その導入から実践までを図とともにわかりやすく解説した書籍。カンバンの原則などの入門的な事柄から、サービスクラス、プロセスの改善など、一歩進んだ応用的な話題までを網羅的に解説します。
  • Software in 30 Days スクラムによるアジャイルな組織変革“成功"ガイド
  • 著者/訳者:Ken Schwaber、Jeff Sutherland著、角征典、吉羽龍太郎、原田騎郎、川口恭伸訳
  • 出版社:アスキー・メディアワークス( 2013-03-08 )
  • 定価:¥ 1,680
  • スクラムの父であるジェフ・サザーランドとケン・シュエイバーによる著者の日本語版。ビジネス層、マネジメント層向けにソフトウェア開発プロセス変革の必要性やアジャイル型開発プロセスの優位性について説明
  • How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜
  • 著者/訳者:Jurgen Appelo, 前川哲次(翻訳), 川口恭伸(翻訳), 吉羽龍太郎(翻訳)
  • 出版社:達人出版会
  • 定価:500円
  • どうすれば自分たちの組織を変えられるだろう?それには、組織に変革を起こすチェンジ・マネジメントを学習することだ。アジャイルな組織でのマネージャーの役割を説いた『Management 3.0』の著者がコンパクトにまとめた変化のためのガイドブック