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新刊『チームトポロジー』発売のお知らせ

みなさんこんにちは。@ryuzeeです。

言いたいことはタイトルに書いたとおりなのですが、2021年12月1日に、新刊『チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計』が発売になります。

原著はMatthew Skelton、Manuel Pais氏の『Team Topologies: Organizing Business and Technology Teams for Fast Flow』で、翻訳は株式会社アトラクタのアジャイルコーチ(いつもの3人)で行いました。

現代の組織における開発チームの構成と配置について扱っています。 自社でどのように開発組織を構成し、変化させていくと良いかを悩んでいる方には参考になるのではないかと思います。

みどころ

みなさんは「コンウェイの法則」について聞いたことがあるでしょうか? これは「システムを設計する組織は、その構造をそっくりまねた構造の設計を生み出してしまう」という法則で、1968年にメルヴィン・コンウェイが書いた論文が元になっています。 50年も前にできた法則が今どう関係あるの?と思うかもしれませんが、現代のソフトウェアにおいてもこの法則は当てはまります。 ソフトウェアのアーキテクチャーとチーム構造は不可分(自己相似形)であり、アーキテクチャーにあわないチーム構造を選択したり、チーム構造にあわないアーキテクチャーを選択すると問題が起きます。

例えば、伝統的な(古典的な)ソフトウェア開発の現場で、コンポーネント単位のチームや専門スキル別のチームに分けてしまうと、さまざまなチームが集まって調整を行ったり、日々の仕事のなかでチームをまたいでコミュニケーションを行ったりする必要が出てきます。 しかし、このようなやり方は、コミュニケーションコストが高く、常に何かを待つことになり、ソフトウェアを出荷するのは大変な苦労が伴います。 関係者は多くのことを知らなければならず、認知負荷も高くなります。 こうなると、ビジネスの要求する速度に追随することもできません。

チームトポロジーは、このコンウェイの法則を踏まえたチームファーストのアプローチです。 「チーム構造と組織構造を進化させて、望ましいアーキテクチャーを実現する」という逆コンウェイ戦略を実現するために、4つのチームタイプと3つのインタラクションモードを定めています。 それをもとにフローを最適化する組織を設計しようというのが肝です。 なお、組織の設計は固定的なものであるべきではなく、組織やプロダクトの進化に応じて、漸進的に変化していかなければいけない、という点についても強調しています。

本書で紹介しているチームタイプは4種類で、開発組織のチームは4種類のうちのどれかになります。

  • ストリームアラインドチーム: ビジネスの主な変更フロー(つまりバリューストリーム)に沿って配置するチーム。職能横断型で、他のチームを待たずにデリバリーできる。いちばん中心となるチームタイプ
  • プラットフォームチーム: インフラやツール、共通サービスなどを提供するチーム。これによってストリームアラインドチームは詳細を知る必要がなくなり認知負荷が下がる
  • イネイブリングチーム: 他のチームが新しい技術やスキルを身につけるのを支援するチーム。永続的に支援するのではなく、短期的な支援となるのが普通
  • コンプリケイテッド・サブシステムチーム: 名前のとおり複雑なサブシステムやコンポーネントを扱う専門チーム。必要なときだけ構成する

インタラクションモードは3つです。インタラクションモードとはチーム同士の関与の仕方、関係性を表したものです。

  • コラボレーションモード: 2つのチームが探索を目的として協力しあう。責任境界が不明確で効率は悪いが学習は進む
  • X-as-a-Serviceモード: 一方のチームが他方のチームが提供するものをサービスとして利用する関係性
  • ファシリテーションモード: 一方のチームが他方のチームが新しい技術を身につけたり学習したりするためにファシリテーションする

4つのチームのうち、ストリームアラインドチームが根幹となるチームで、このチームが素早くデリバリーできるようにするために他のチームが周りにいて、規定したやり方でコミュニケーションするという構図になります。 本書では、さまざまな事例を交えながら、このアプローチの有効性を解説しています。 事例には、Amazon、Adidas、Spotifyなども登場します。

興味をお持ち頂けた場合は、ぜひ書籍をお手に取ってみてください。12月1日発売です!!

参考リソース

チームトポロジーの全体像については、以下に参考リソースをあげておきます。

目次

  • PART I デリバリーの手段としてのチーム

    • Chapter1 組織図の問題
    • Chapter2 コンウェイの法則が重要な理由
    • Chapter3 チームファースト思考
  • PART Ⅱ フローを機能させるチームトポロジー

    • Chapter4 静的なチームトポロジーチームのアンチパターン
    • Chapter5 4つの基本的なチームタイプ
    • Chapter6 チームファーストな境界を決める
  • PART Ⅲ イノベーションと高速なデリバリーのため にチームインタラクションを進化させる

    • Chapter7 チームインタラクションモード
    • Chapter8 組織的センシングでチーム構造を進化させる
    • Chapter9 次世代デジタル運用モデル

それでは。

アジャイルコーチングやトレーニングを提供しています

株式会社アトラクタでは、アジャイル開発に取り組むチーム向けのコーチングや、認定スクラムマスター研修などの各種トレーニングを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

詳細はこちら
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  • 著者/訳者:Gunther Verheyen / 吉羽龍太郎 原田騎郎 永瀬美穂
  • 出版社:オライリージャパン(2021-03-23)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラムはアジャイル開発のフレームワークですが、その実装は組織やチームのレベルに応じてさまざまです。本書はスクラムの実践において、さまざまな課題に対処してきた実践者が自らの経験や考え方を語るエッセイ集です。日本語書き下ろしコラムを追加で10本収録
  • プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける
  • 著者/訳者:Melissa Perri / 吉羽龍太郎
  • 出版社:オライリージャパン(2020-10-26)
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  • プロダクト開発を作った機能の数やベロシティなどのアウトプットで計測すると、ビルドトラップと呼ばれる失敗に繋がります。本書ではいかにしてビルドトラップを避けて顧客に価値を届けるかを解説しています。
  • SCRUM BOOT CAMP THE BOOK 【増補改訂版】
  • 著者/訳者:西村直人 永瀬美穂 吉羽龍太郎
  • 出版社:翔泳社(2020-05-20)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラム初心者に向けて基本的な考え方の解説から始まり、プロジェクトでの実際の進め方やよく起こる問題への対応法まで幅広く解説。マンガと文章のセットでスクラムを短期間で理解できます。スクラムの概要を正しく理解したい人、もう一度おさらいしたい人にオススメ。
  • みんなでアジャイル ―変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた
  • 著者/訳者:Matt LeMay / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン(2020-3-19)
  • 定価:¥ 2,640
  • アジャイルで本当の意味での成果を出すには、開発チームだけでアジャイルに取り組むのではなく、組織全体がアジャイルになる必要があります。本書にはどうやってそれを実現するかのヒントが満載です
  • レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める9つのプラクティス
  • 著者/訳者:David Scott Bernstein / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン( 2019-9-18 )
  • 定価:¥ 3,132
  • レガシーコードになってから慌てるのではなく、日々レガシーコードを作らないようにするにはどうするか。その観点で、主にエクストリームプログラミングに由来する9つのプラクティスとその背後にある原則をわかりやすく説明しています。
  • Effective DevOps ―4本柱による持続可能な組織文化の育て方
  • 著者/訳者:Jennifer Davis、Ryn Daniels / 吉羽 龍太郎、長尾高弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2018-3-24 )
  • 定価:¥ 3,888
  • 主にDevOpsの文化的な事柄に着目し、異なるゴールを持つチームが親和性を高め、矛盾する目標のバランスを取りながら最大限の力を発揮する方法を解説します
  • ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント
  • 著者/訳者:リチャード・シェリダン / 原田騎郎, 安井力, 吉羽龍太郎, 永瀬美穂, 川口恭伸
  • 出版社:翔泳社( 2016-12-20 )
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  • 米国で何度も働きやすい職場として表彰を受けているメンローの創業者かつCEOであるリチャード・シェリダン氏が、職場に喜びをもたらす知恵や経営手法、より良い製品の作り方などを惜しみなく紹介しています
  • アジャイルコーチの道具箱 – 見える化の実例集
  • 著者/訳者:Jimmy Janlén / 原田騎郎, 吉羽龍太郎, 川口恭伸, 高江洲睦, 佐藤竜也
  • 出版社:Leanpub( 2016-04-12 )
  • 定価:$14.99
  • この本は、チームの協調とコミュニケーションを改善したり、行動を変えるための見える化の実例を集めたものです。96個(+2)の見える化の方法をそれぞれ1ページでイラストとともに解説しています。アジャイル開発かどうかに関係なくすぐに使えるカタログ集です
  • カンバン仕事術 ―チームではじめる見える化と改善
  • 著者/訳者:原田騎郎 安井力 吉羽龍太郎 角征典 高木正弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2016-03-25 )
  • 定価:¥ 2,138
  • チームの仕事や課題を見える化する手法「カンバン」について、その導入から実践までを図とともにわかりやすく解説した書籍。カンバンの原則などの入門的な事柄から、サービスクラス、プロセスの改善など、一歩進んだ応用的な話題までを網羅的に解説します。
  • Software in 30 Days スクラムによるアジャイルな組織変革“成功"ガイド
  • 著者/訳者:Ken Schwaber、Jeff Sutherland著、角征典、吉羽龍太郎、原田騎郎、川口恭伸訳
  • 出版社:アスキー・メディアワークス( 2013-03-08 )
  • 定価:¥ 1,680
  • スクラムの父であるジェフ・サザーランドとケン・シュエイバーによる著者の日本語版。ビジネス層、マネジメント層向けにソフトウェア開発プロセス変革の必要性やアジャイル型開発プロセスの優位性について説明
  • How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜
  • 著者/訳者:Jurgen Appelo, 前川哲次(翻訳), 川口恭伸(翻訳), 吉羽龍太郎(翻訳)
  • 出版社:達人出版会
  • 定価:500円
  • どうすれば自分たちの組織を変えられるだろう?それには、組織に変革を起こすチェンジ・マネジメントを学習することだ。アジャイルな組織でのマネージャーの役割を説いた『Management 3.0』の著者がコンパクトにまとめた変化のためのガイドブック