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ryuzeeによるブログ記事。不定期更新

【書評】マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた

みなさんこんにちは。@ryuzeeです。

昨日本屋で偶然積んであったので買ってみた本を紹介します。あんまり話題になっていないようですが個人的には相当おもしろいと思います。

内容としては、元々マイクロソフトでインターネットエクスプローラーの開発プロジェクトなどを務めてきたスコット・バークン氏が、WordPress.comを運営するAutomattic社にジョインして過ごした約1年半を振り返ってたノンフィクションです。 筆者は大企業での経験が長い一方でAutomattic社の社員のほとんどは大きな企業で働いたことがない、チームメンバーはグローバルに散らばっており一同に会することはめったにない、という状況下でチームリーダーになった筆者のアクションや洞察が赤裸々に語られています。

ちなみにご存知の通り、Wordpressは2003年から開発が始まり現在も続いているブログソフトウェアのデファクトスタンダードで、Automattic社のCEOであるMatt Mullenweg (マット・マレンウェッグ)が立ち上げたものです。

以下では本文の中で特に気になったところを引用で紹介します。

  • どれほど素晴らしいテクニックも愚かな社員を賢くすることはできないし、疑心暗鬼の職場にどんな方法を導入しても、社員が同僚や上司を魔法のように信頼しだしたりはしないのだ

  • あらゆる文化は小さな種から育つ。またたったひとつの決定で文化ができるわけでもない。リーダーと貢献者との頻繁なやりとりの中で、あることが強化され、別のことが排除されて、そこから文化が立ち現れるのだ

  • 1.問題を選ぶ 2.公開通知とサポートページを書いてみる 3.成否を判断するためのデータについて考える 4.作業開始 5.公開する 6.学ぶ 7.繰り返す

  • イノベーションについて語る会社の初歩的な間違いは『実験』の基準を高く設定することだ。それではアイデアを試すことすらむずかしくなる。すぐれたアイデアを悪いアイデアから選り分けるのにどれほど多くの実験が必要なのかを理解していないからだ

  • 進歩を望まないなら伝統も悪くないけれど、進歩したいなら変化が必要で、変化には伝統の再評価が必要だ。伝統が何のためにあるのか、どのように実行されているかを見直さなければならない

  • すべてのサービスには保守が必要だが、成長より保守に時間がかかりはじめたら、何かが間違っている

  • あらゆる測定法は疑念を生む。立派な意図とすぐれた頭脳があってもデータが参加者を愚かな自己破壊のサイクルにどんどん巻き込んでいく。データが物事を決めてくれるわけではない。データを注意深くとらえれば物事がはっきり見えるようになるが、それは決定ではない

  • 何かにしゃれた呼び名をつけたからといって、人が利口になるわけではない。むしろ正確な語彙を正確な技術と思い込んで、愚かになる。あらゆるビジネスの方法論に言えることだが、問題解決の方法の問題点は、抽象概念だということだ

  • チーム制の副作用は必ずチームの担当から漏れてしまう分野ができることだ。チーム制は縄張りを作る。社員の集中力を高め、誇りを感じさせる点では好ましいが、チームとチームのあいだからもれるプロジェクトができて問題となる

  • だいたいどんな組織でも報酬が火種になることが多すぎるので、入念な業績評価システムを確立している。その結果、また別の『データの罠』が生まれる。業績評価システムが複雑になればなるほど、効率が悪くなるのだ

  • すぐれたリーダーの最後の仕事は、自分がいなくなったあとも万事うまくいくようにしておくことだ

ということでお勧め度★★★★★です。

それでは。

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株式会社アトラクタでは、アジャイル開発に取り組むチーム向けのコーチングや、認定スクラムマスター研修などの各種トレーニングを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

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  • スクラム実践者が知るべき97のこと
  • 著者/訳者:Gunther Verheyen / 吉羽龍太郎 原田騎郎 永瀬美穂
  • 出版社:オライリージャパン(2021-03-23)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラムはアジャイル開発のフレームワークですが、その実装は組織やチームのレベルに応じてさまざまです。本書はスクラムの実践において、さまざまな課題に対処してきた実践者が自らの経験や考え方を語るエッセイ集です。日本語書き下ろしコラムを追加で10本収録
  • プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける
  • 著者/訳者:Melissa Perri / 吉羽龍太郎
  • 出版社:オライリージャパン(2020-10-26)
  • 定価:¥ 2,640
  • プロダクト開発を作った機能の数やベロシティなどのアウトプットで計測すると、ビルドトラップと呼ばれる失敗に繋がります。本書ではいかにしてビルドトラップを避けて顧客に価値を届けるかを解説しています。
  • SCRUM BOOT CAMP THE BOOK 【増補改訂版】
  • 著者/訳者:西村直人 永瀬美穂 吉羽龍太郎
  • 出版社:翔泳社(2020-05-20)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラム初心者に向けて基本的な考え方の解説から始まり、プロジェクトでの実際の進め方やよく起こる問題への対応法まで幅広く解説。マンガと文章のセットでスクラムを短期間で理解できます。スクラムの概要を正しく理解したい人、もう一度おさらいしたい人にオススメ。
  • みんなでアジャイル ―変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた
  • 著者/訳者:Matt LeMay / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン(2020-3-19)
  • 定価:¥ 2,640
  • アジャイルで本当の意味での成果を出すには、開発チームだけでアジャイルに取り組むのではなく、組織全体がアジャイルになる必要があります。本書にはどうやってそれを実現するかのヒントが満載です
  • レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める9つのプラクティス
  • 著者/訳者:David Scott Bernstein / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン( 2019-9-18 )
  • 定価:¥ 3,132
  • レガシーコードになってから慌てるのではなく、日々レガシーコードを作らないようにするにはどうするか。その観点で、主にエクストリームプログラミングに由来する9つのプラクティスとその背後にある原則をわかりやすく説明しています。
  • Effective DevOps ―4本柱による持続可能な組織文化の育て方
  • 著者/訳者:Jennifer Davis、Ryn Daniels / 吉羽 龍太郎、長尾高弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2018-3-24 )
  • 定価:¥ 3,888
  • 主にDevOpsの文化的な事柄に着目し、異なるゴールを持つチームが親和性を高め、矛盾する目標のバランスを取りながら最大限の力を発揮する方法を解説します
  • ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント
  • 著者/訳者:リチャード・シェリダン / 原田騎郎, 安井力, 吉羽龍太郎, 永瀬美穂, 川口恭伸
  • 出版社:翔泳社( 2016-12-20 )
  • 定価:¥ 1,944
  • 米国で何度も働きやすい職場として表彰を受けているメンローの創業者かつCEOであるリチャード・シェリダン氏が、職場に喜びをもたらす知恵や経営手法、より良い製品の作り方などを惜しみなく紹介しています
  • アジャイルコーチの道具箱 – 見える化の実例集
  • 著者/訳者:Jimmy Janlén / 原田騎郎, 吉羽龍太郎, 川口恭伸, 高江洲睦, 佐藤竜也
  • 出版社:Leanpub( 2016-04-12 )
  • 定価:$14.99
  • この本は、チームの協調とコミュニケーションを改善したり、行動を変えるための見える化の実例を集めたものです。96個(+2)の見える化の方法をそれぞれ1ページでイラストとともに解説しています。アジャイル開発かどうかに関係なくすぐに使えるカタログ集です
  • カンバン仕事術 ―チームではじめる見える化と改善
  • 著者/訳者:原田騎郎 安井力 吉羽龍太郎 角征典 高木正弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2016-03-25 )
  • 定価:¥ 2,138
  • チームの仕事や課題を見える化する手法「カンバン」について、その導入から実践までを図とともにわかりやすく解説した書籍。カンバンの原則などの入門的な事柄から、サービスクラス、プロセスの改善など、一歩進んだ応用的な話題までを網羅的に解説します。
  • Software in 30 Days スクラムによるアジャイルな組織変革“成功"ガイド
  • 著者/訳者:Ken Schwaber、Jeff Sutherland著、角征典、吉羽龍太郎、原田騎郎、川口恭伸訳
  • 出版社:アスキー・メディアワークス( 2013-03-08 )
  • 定価:¥ 1,680
  • スクラムの父であるジェフ・サザーランドとケン・シュエイバーによる著者の日本語版。ビジネス層、マネジメント層向けにソフトウェア開発プロセス変革の必要性やアジャイル型開発プロセスの優位性について説明
  • How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜
  • 著者/訳者:Jurgen Appelo, 前川哲次(翻訳), 川口恭伸(翻訳), 吉羽龍太郎(翻訳)
  • 出版社:達人出版会
  • 定価:500円
  • どうすれば自分たちの組織を変えられるだろう?それには、組織に変革を起こすチェンジ・マネジメントを学習することだ。アジャイルな組織でのマネージャーの役割を説いた『Management 3.0』の著者がコンパクトにまとめた変化のためのガイドブック