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ryuzeeによるブログ記事。不定期更新

これからプロダクトオーナーになる人へ

みなさんこんにちは。@ryuzeeです。

これからスクラムで初めてプロダクトオーナーをやる方に向けてのポエムです。

何はともあれ時間を確保しよう

プロダクトオーナーは非常に忙しい役割です。片手間でできる仕事ではありません。

例えば、プロダクトオーナーが開発チームのために週1日しか開発チームと一緒の時間をすごせず、後はメールやSlackなどのオンラインツールで非同期かつ遅延のあるコミュニケーションを取る場合を考えてみましょう。そこで起こるのは、開発のリードタイムの増加と手戻りの増加です。細かい確認をすべてオンラインでやることはできないので、開発チームは想像で物事を進めてしまい、後で認識の違いが分かり使った時間を無駄にするか、次回対面で話せるまで結論を先送りにするかのいずれかになります。

プロダクトオーナーは、プロダクトにつき1人です。サポート役をつけることはできますが、最終意思決定者が1人という構造上、いちばんボトルネックになりやすいのです。プロダクトオーナーがボトルネックになると、開発チームを改善しても部分最適に過ぎず、全体の成果は変わりません。

ボトルネックに対処するにはいくつか方法があります。先に書いたようにサポート役をつけることも可能ですが、それよりも大事なのは、余計な仕事を手放すことです。自分以外の人でもできる仕事はどんどん手放して時間を空けましょう。 それができないのであれば、そもそもプロダクトオーナーになってはいけません。ステークホルダーとして関与しましょう。

NOと言うのが仕事

すべてのものは有限です。プロダクトの開発の予算や期間は限られています。開発チームの人数も限られていますし、その一方でやりたいことはたくさんあります。すべてをやることは絶対にできません。

アジャイル開発は、短い期間に区切って繰り返しフィードバックを得ながら進めていくやり方です。スプリントレビューで参加者からプロダクトや機能についてのフィードバックを多数もらいますし、開発チームからもどんどんフィードバックが出てきます。ほかにも会社の別部門からのフィードバックや依頼などもあるでしょう。こういったものは、健全に進んでいる証でもあります。 ですが、それらすべてに対応することは物理的に不可能ですし、中にはやるだけの価値がないものもたくさん含まれます。つまり選別が必要です。もちろんプロダクトバックログの末尾にそういったものを入れておいて、時間が過ぎさるのを待つのでも構いませんが、相手の期待が高ければ高いほど、「NO」をはっきり言うことが重要です。

相手が誰だろうと関係なく、プロダクト全体の成果を考えて判断をはっきり示してください。そして判断を示すときには、なぜその判断をしているのかの理由も分かるようにするとよいでしょう。

我慢強くいよう

NOを言うことに繋がりますが、プロダクトオーナーには我慢強さが求められます。

要件を詰めきれていないけど、「とりあえず」これで進めてみて後から考えよう。開発チームが作ったものが受け入れ基準を満たしていないけど、「とりあえず」時間もないので一旦受け入れよう。「とりあえず」持ち帰って考えよう。「とりあえず」この方針で進めよう。などなど。「とりあえず」という単語は我慢ができていない兆候の1つです(仕事終わりの生ビールは除外して構いません)。

もちろんほとんどの意思決定はやり直せるので、完璧にならない限り進めないということではありません。ただし多くの問題は決めれることを決めていないことによって起こります。 プロダクトオーナーは決めてください。決めきれないものを焦って見切り発車しないでください。目先の進捗や見せかけの成果を出したいという気持ちを我慢してください。大きな問題を先送りしたい気持ちを我慢してください。

助けを求めよう

スクラムで成果を出す上で、プロダクトオーナーはいちばん重要です(なお、僕はプロダクトオーナーがいちばんやりたくないロールです)。ステークホルダーとのやりとり、開発チームとのやりとり、さまざまな意思決定などやるべきことはたくさんあります。色々な悩みや問題は尽きることはないでしょう。ですが、それを1人で抱え込む必要はありません。すべてのことを1人でやりきれるわけでもありません。困ったことがあれば、開発チームやスクラムマスター、ステークホルダーなどに助けを求めてください。プロダクトオーナーがプロダクトに真摯に取り組んでいればみんな協力してくれるはずです。

それでは頑張ってください!

アジャイルコーチングやトレーニングを提供しています

株式会社アトラクタでは、アジャイル開発に取り組むチーム向けのコーチングや、認定スクラムマスター研修などの各種トレーニングを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

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  • 出版社:オライリージャパン(2021-03-23)
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  • スクラムはアジャイル開発のフレームワークですが、その実装は組織やチームのレベルに応じてさまざまです。本書はスクラムの実践において、さまざまな課題に対処してきた実践者が自らの経験や考え方を語るエッセイ集です。日本語書き下ろしコラムを追加で10本収録
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  • How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜
  • 著者/訳者:Jurgen Appelo, 前川哲次(翻訳), 川口恭伸(翻訳), 吉羽龍太郎(翻訳)
  • 出版社:達人出版会
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  • どうすれば自分たちの組織を変えられるだろう?それには、組織に変革を起こすチェンジ・マネジメントを学習することだ。アジャイルな組織でのマネージャーの役割を説いた『Management 3.0』の著者がコンパクトにまとめた変化のためのガイドブック