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ryuzeeによるブログ記事。不定期更新

【資料公開】プロダクトマネジメントの”罠”を回避しよう

みなさんこんにちは。@ryuzeeです。

3月23日に新刊『スクラム実践者が知るべき97のこと』が発売になりました。 スクラムを作ったケン・シュエイバー氏、日本で認定スクラムマスター研修を何度も開催しているジェームズ・コプリエン氏を始めとした海外のスクラム界隈の著名人68人による97本のコラム集です。 日本語版の発売に際して、及部敬雄さん、小林恭平(kyon_mm)さん、高橋一貴さん、長沢智治さん、平鍋健児さん、安井力(やっとむ)さん、和田卓人さん、訳者3人のコラムもあわせて収録しています。 チームのみんなで議論したり、ふりかえりのネタにしたり、自分たちの環境でヒントになることを探したりと、さまざまな使い方ができると思いますので、ぜひお手にとってご覧ください。

なお、僕が所属する株式会社アトラクタでは、発売を記念して抽選で20名の方にプレゼントする企画を行っていますので、興味のある方はお申し込みください。締め切りは4月7日です。

さて今回の話は、2020年10月発売の『プロダクトマネジメント - ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける』です。

2020年12月22日に翔泳社のメディア ProductZine主催のウェビナーで本書の内容をもとに、プロダクトマネジメントの「罠」を回避するための考え方について話をしてきました。 遅まきながら(公開したつもりで忘れてた)、その時の資料を公開しておきます。 ウェビナーのレポートについては、こちらのレポートを参照してください。


以下、資料だけ見てもわからない方向けの解説です。

ビルドトラップとは何か?

プロダクトの開発を行うときに気をつけなければいけないのは、アウトプット、アウトカム、インパクトの違いです。

  • アウトプットとは例えば、開発/リリースしたプロダクトの機能、こなしたタスク、書いたコードの量のようなものです。量で測定できるものとも言えます。
  • 一方でアウトカムは、プロダクトによる顧客が抱える問題の解決や行動の変容を指します。
  • またインパクトはアウトカムによって組織にもたらされた影響(経済的価値であることが多いですが、それに限らない)を指します。

プロダクト開発において重視するのは、これらのうちアウトカムやインパクトになります。それがビジネスの成功を示すものになるからです。 一方でアウトプットをプロダクト成功の指標にしてしまうと、行き詰まってビルドトラップに陥ります。 実際に生み出された価値ではなく、機能の開発とリリースに集中してしまっている状況がビルドトラップということになります。

ビルドトラップの兆候

ビルドトラップの兆候は日々の活動のなかで見て取れます。例としては以下のようなものがありますが、これに限りません。 簡単な見分け方としては、日々の活動のなかで「顧客の課題の解決」を会話の中心においているかどうかです。 そうではなく、納期や生産性、上司やステークホルダーについての会話の量が多いのであれば、ビルドトラップの兆候と考えて構いません。 ほかにも色々あると思うので、こういうのもあるよ!という方はぜひ@ryuzeeまでお知らせください。

ビルドトラップを防ぐには?

ビルドトラップを防ぐのはなかなか大変で、さまざまな取り組みが必要になります。 そのなかでも個人的に重要な取り組みだと思っているのが、プロジェクト思考からプロダクト思考への転換です。 新規プロダクトだろうがなんだろうが、すべて「プロジェクト」型で進めていて、そのときの関心事が、いわゆるQCDS(品質、コスト、納期、スコープ)の遵守になっている組織がとても多いのです。 経営やマネージャーがなんらかの評価をするときにも、プロジェクトの軸で評価しようとしてしまいます。 ですが、QCDSを満たしているからといって、アウトカムを作り出し、ビジネスのインパクトが上げられるとは限りません。 このあたりの思考の転換が何よりも重要だと思う次第です。

その上で、以下のような取り組みを行っていくのが良いと思います(詳細はスライドを参照してください)。

  • 適切なプロダクトマネージャーを配置する
  • 適切なチーム構成にする
  • 戦略を組織に行き渡らせる
  • ソリューションの前に問題を理解する
  • ソリューションを探索する
  • 適切な指標を定めて活用する
  • 組織をプロダクト主導にする

さらに詳細が知りたい方は、ぜひ『プロダクトマネジメント - ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける』をご覧ください。 それでは。

アジャイルコーチングやトレーニングを提供しています

株式会社アトラクタでは、アジャイル開発に取り組むチーム向けのコーチングや、認定スクラムマスター研修などの各種トレーニングを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

詳細はこちら
  • スクラム実践者が知るべき97のこと
  • 著者/訳者:Gunther Verheyen / 吉羽龍太郎 原田騎郎 永瀬美穂
  • 出版社:オライリージャパン(2021-03-23)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラムはアジャイル開発のフレームワークですが、その実装は組織やチームのレベルに応じてさまざまです。本書はスクラムの実践において、さまざまな課題に対処してきた実践者が自らの経験や考え方を語るエッセイ集です。日本語書き下ろしコラムを追加で10本収録
  • プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける
  • 著者/訳者:Melissa Perri / 吉羽龍太郎
  • 出版社:オライリージャパン(2020-10-26)
  • 定価:¥ 2,640
  • プロダクト開発を作った機能の数やベロシティなどのアウトプットで計測すると、ビルドトラップと呼ばれる失敗に繋がります。本書ではいかにしてビルドトラップを避けて顧客に価値を届けるかを解説しています。
  • SCRUM BOOT CAMP THE BOOK 【増補改訂版】
  • 著者/訳者:西村直人 永瀬美穂 吉羽龍太郎
  • 出版社:翔泳社(2020-05-20)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラム初心者に向けて基本的な考え方の解説から始まり、プロジェクトでの実際の進め方やよく起こる問題への対応法まで幅広く解説。マンガと文章のセットでスクラムを短期間で理解できます。スクラムの概要を正しく理解したい人、もう一度おさらいしたい人にオススメ。
  • みんなでアジャイル ―変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた
  • 著者/訳者:Matt LeMay / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン(2020-3-19)
  • 定価:¥ 2,640
  • アジャイルで本当の意味での成果を出すには、開発チームだけでアジャイルに取り組むのではなく、組織全体がアジャイルになる必要があります。本書にはどうやってそれを実現するかのヒントが満載です
  • レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める9つのプラクティス
  • 著者/訳者:David Scott Bernstein / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン( 2019-9-18 )
  • 定価:¥ 3,132
  • レガシーコードになってから慌てるのではなく、日々レガシーコードを作らないようにするにはどうするか。その観点で、主にエクストリームプログラミングに由来する9つのプラクティスとその背後にある原則をわかりやすく説明しています。
  • Effective DevOps ―4本柱による持続可能な組織文化の育て方
  • 著者/訳者:Jennifer Davis、Ryn Daniels / 吉羽 龍太郎、長尾高弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2018-3-24 )
  • 定価:¥ 3,888
  • 主にDevOpsの文化的な事柄に着目し、異なるゴールを持つチームが親和性を高め、矛盾する目標のバランスを取りながら最大限の力を発揮する方法を解説します
  • ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント
  • 著者/訳者:リチャード・シェリダン / 原田騎郎, 安井力, 吉羽龍太郎, 永瀬美穂, 川口恭伸
  • 出版社:翔泳社( 2016-12-20 )
  • 定価:¥ 1,944
  • 米国で何度も働きやすい職場として表彰を受けているメンローの創業者かつCEOであるリチャード・シェリダン氏が、職場に喜びをもたらす知恵や経営手法、より良い製品の作り方などを惜しみなく紹介しています
  • アジャイルコーチの道具箱 – 見える化の実例集
  • 著者/訳者:Jimmy Janlén / 原田騎郎, 吉羽龍太郎, 川口恭伸, 高江洲睦, 佐藤竜也
  • 出版社:Leanpub( 2016-04-12 )
  • 定価:$14.99
  • この本は、チームの協調とコミュニケーションを改善したり、行動を変えるための見える化の実例を集めたものです。96個(+2)の見える化の方法をそれぞれ1ページでイラストとともに解説しています。アジャイル開発かどうかに関係なくすぐに使えるカタログ集です
  • カンバン仕事術 ―チームではじめる見える化と改善
  • 著者/訳者:原田騎郎 安井力 吉羽龍太郎 角征典 高木正弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2016-03-25 )
  • 定価:¥ 2,138
  • チームの仕事や課題を見える化する手法「カンバン」について、その導入から実践までを図とともにわかりやすく解説した書籍。カンバンの原則などの入門的な事柄から、サービスクラス、プロセスの改善など、一歩進んだ応用的な話題までを網羅的に解説します。
  • Software in 30 Days スクラムによるアジャイルな組織変革“成功"ガイド
  • 著者/訳者:Ken Schwaber、Jeff Sutherland著、角征典、吉羽龍太郎、原田騎郎、川口恭伸訳
  • 出版社:アスキー・メディアワークス( 2013-03-08 )
  • 定価:¥ 1,680
  • スクラムの父であるジェフ・サザーランドとケン・シュエイバーによる著者の日本語版。ビジネス層、マネジメント層向けにソフトウェア開発プロセス変革の必要性やアジャイル型開発プロセスの優位性について説明
  • How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜
  • 著者/訳者:Jurgen Appelo, 前川哲次(翻訳), 川口恭伸(翻訳), 吉羽龍太郎(翻訳)
  • 出版社:達人出版会
  • 定価:500円
  • どうすれば自分たちの組織を変えられるだろう?それには、組織に変革を起こすチェンジ・マネジメントを学習することだ。アジャイルな組織でのマネージャーの役割を説いた『Management 3.0』の著者がコンパクトにまとめた変化のためのガイドブック