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役割と責任の区別をつける
みなさんこんにちは。@ryuzeeです。 2026年3月4日に新刊の訳書『Aligned ―プロダクト開発におけるステークホルダーとの関係性の築き方』がオライリー・ジャパンから発売になりましたのでよろしくお願いします。
本記事は、先日Xに書いた記事の転載です。
先日Xで「スクラムマスターが何もしない。ふざけんな(意訳)」という話を見かけました。
確かに、何もしていないのであれば不要なんじゃないか、という気もします。
ただ、この話はいくつか論点が混ざっていそうなので、分けて見ていきましょう。
役割と責任は違う
スクラムマスターの話なので、見るべきはスクラムガイドです。とりあえず擦り切れるくらい読んでください。 スクラムガイド2020年版では、今回の話に関係がある大きな改訂が行われました。 それが「責任(Accountability)」です。 スクラムガイド2017まではプロダクトオーナー、開発者、スクラムマスターは「役割(Role)」と言われていましたが、スクラムガイド2020では、これらを「責任(Accountability)」と呼ぶように変わっています。
役割(Role)というのは「誰が何をするか」を指します。 一方で責任(Accountability)は、Wikipediaではリーダーシップの文脈において次のように定義されています(邦訳は僕による)。
「行動・成果・意思決定に対して責任を引き受け、その結果について報告・説明・答弁する義務」
https://en.wikipedia.org/wiki/Accountability
つまり、「どう考えて意思決定したのか」「何を試したのか」「その結果がどうなったのか」「結果をどう受け止めているのか」「次にどうつなげるのか」といった点について担当し、(必要なら)それを相手にわかるように説明し、質問に答えられる、というのが責任(Accountability)です。
ただし、これは「結果を保証する」という意味ではありません。複雑な問題においては、結果なんて保証しようがありません。「結果に対してオーナーシップを持つ」のが責任(Accountability)です。
ここで話をややこしくしているのが、日本語の「責任」という言葉の意味です。 日本語の「責任」には、上記で紹介したAccountabilityのほかに、Responsibilityの意味も含まれます。 Responsibilityは「実行責任」であり、タスクなどを実際にやる責任、つまり誰が手を動かすかの話です。
スクラムガイド2020で用語を変えた意図は、「誰が何をするか」はスクラムチームの自己管理の一環として、自分たちで決めろ。ただし意思決定の一貫性や容易性から、誰がどの領域でAccountabilityを持つかは明確にしろということです。
もう1つ抑えておいたほうがよいことがあって、それが「役割」と「肩書き、役職、職種」を分けて考えることです。 プロダクトオーナーやスクラムマスター、開発者は、会社の役職や職種ではありません。あくまでスクラムチームのなかでの責任の区分です(スクラムマスターの採用募集を見たら、役割はプロジェクトマネージャーじゃん、みたいなのをよく見ますよね)。
これを理解しておけば「それはあなたの仕事ですよね?」とか「プロダクトオーナーがプロダクトバックログアイテムを用意してくれないので作業が進まない」といった発言が出なくなります。
ちなみにスクラムマスターの責任(Accountability)は以下のとおりです。
スクラムマスターは、スクラムガイドで定義されたスクラムを確立させることの結果に責任を持つ。 スクラムマスターは、スクラムチームの有効性に責任を持つ。
この責任(Accountability)を果たす方法はチームの状況やスクラムマスター自身のスタイルによってさまざまです。 スクラムマスターがすべてのイベントの司会やファシリテーターをする実行責任(Responsibility)なんかありません。
「何もしない問題」の正体
ここまでの話を踏まえると、「スクラムマスターが何もしない問題」は少し違った見え方になるかもしれません。
スクラムが適切に実践されていて、スクラムチームが有効に機能しているのであれば、スクラムマスターがスクラムチームのなかでやることは多くはありません。むしろスクラムチームの外側(組織)での取り組みが増えていくのが普通です。
つまりスクラムチームの他の人から「何もしていないように見えている」だけかもしれません。 これは、スクラムマスターの行動に透明性がなく、説明責任を果たしていない可能性があることを示唆しています。 スクラムマスターかどうかに関係なく、自分がどんな目的のために何をしているのかは公開していかなければいけません。
チームにはやることが山ほどあります。プロダクトオーナーや開発者が忙しく仕事をしているのに、スクラムマスターが何もしてなさそうに見えれば、そりゃ「お前は何もやらないのか?」と思います。スクラムマスターは自分が何に取り組んでいるかを他の人からわかるようにしましょう。
ちなみに、本当に何もしていないスクラムマスターがいるかもしれませんが、その場合はスクラムチームのメンバーは、助けてほしいこと、手伝ってほしいことをばんばん伝えましょう。スクラムチーム全体として「毎スプリント価値がある有用なインクリメントを届ける責任」があるので、1人だけ他人事のようにしているなんてありえませんw それでもダメなら、マネージャーにエスカレーションするなどして、チームから追い出してくださいw。イベントだけ登場して司会をして去っていくような謎の存在も同様です。
役割はオーバーラップさせる。責任は曖昧にしない
最近は生成AIの影響もあって、チームは小さくなり、メンバーのスキルもどんどんオーバーラップしています。 「これは自分の仕事じゃない」と言っている余裕なんかありません。 なので、役割の境界は曖昧でよいです。
ただし、責任を曖昧にするのはやめましょう。 責任が曖昧になると、誰も決めなくなります。その結果、合議制になります。合議制はクソです。このあたりの話は、別の記事で書いたのであわせてどうぞ。 責任が明確だから、意図をもって意思決定できるということをお忘れなきよう。
そういえば最近「生成AI時代にプロダクトマネージャーは必要なのか?」って議論がありますけど、これの結論は「従来プロダクトマネージャーがやってたさまざまな仕事は、チームのいろんな人がやることになる。そして、従来プロダクトマネージャーが持っていた責任は、誰かが持たなければいけない。ただ、それをプロダクトマネージャーと呼ぶかどうかは別の話だ」ということでしょうね。 「プロダクトマネージャー」というのは肩書きや職種の名前で、その名前が変わったところで責任が消えることはありません。
Aligned ―プロダクト開発におけるステークホルダーとの関係性の築き方
- 著者/訳者:Bruce McCarthy、 Melissa Appel
- 出版社:オライリー・ジャパン
- 発売日:2026-03-04
- 単行本(ソフトカバー):300ページ
- ISBN-13:9784814401499
- ASIN:4814401493






















